『軽い』の意味を考える

靴と足シリーズ

靴の「軽い」の意味を考える
〜手で持った軽さに、だまされていませんか?〜

靴は軽いほうがいい。それは本当です。重い靴を長時間履けば足は疲れます。
でも、「手で持って軽い靴」と「履いて歩いて軽い靴」は、まったくの別物なんです。この違いを知らないまま靴を選ぶと、軽さを求めたはずなのに、足がどんどん疲れる靴を選んでしまいます。

「軽さ」には2種類ある

まず、この記事でいちばん伝えたいことから話します。

靴の「軽さ」には、秤の上の軽さと、歩いたときの軽さの2種類があります。

みんなが選んでいる軽さ

秤の上の軽さ
=手で持った重量

店頭で手に取って「軽い!」と感じる、グラム数としての軽さ。数字にできるのでわかりやすい。ただし、足がラクかどうかは教えてくれません。

本当に大事な軽さ

歩いたときの軽さ
=足が感じる負担の少なさ

かかとが安定し、足と靴が一体になって、スムーズに体重移動できるときに感じる軽さ。多少グラム数が重くても、合う靴は「軽く」感じます。

足育カウンセラー
手で持った感覚だけに頼っていませんか?
基準にするのは秤の上の軽さではなく、必要な用途と機能。ここがわかっていないと、靴選びは大失敗してしまいます。

よくある靴選びの失敗例

サッカースパイク

部活でサッカーをするためのスパイクを探すとしましょう。

例えば、片足なんと99グラムの靴があるとします。(普通は200グラムを切ればかなり軽い扱いです)

「これで決定だ!」

――では、失敗するのです。

なぜなら、軽いということは、基本的に何かのパーツを削っているということだから。

  • 圧倒的に軽い分、耐久性がない
  • 人工皮革の裏地が必要最低限で、何度も使えばすぐ伸びて破れる
  • 足裏が特別軽い樹脂素材でできている分、日々の部活で履けばすぐダメになる

一般的な校庭で部活サッカーをしたら、1日でボロボロです。(靴底の摩耗は別としてもですよ!)

プロのように定期的に新品が支給されて「2試合くらい使えればいい」なら、試合のパフォーマンスを上げるために履くのはアリです。実際、トップ選手向けの超軽量スパイクはそういう設計思想で作られています。

でも、そんなに頻繁に買える人はなかなかいませんよね。

ポイント 軽さは「タダ」では手に入りません。耐久性・安定性・サポート性のどれかと引き換えに手に入るものです。メーカーは「日々ハードに使っても破れない革」「校庭でも削れにくい靴底」「たくさん履いても歪まない芯材」を、少しでも軽く作るために開発を続けています。ただし、その見極めは自分でやらなくてはいけません。

「軽さ」だけで靴を選ぶことのデメリット

靴選び

普段履きでも、カウンセリングの現場でよく聞く声があります。

お客様
・手で持っただけで重い!もっと軽いのないの?
・こんな重いの履いたら足がすぐ疲れる
・足が痛いのに重い靴なんか履けない

気持ちはとてもよくわかります。でも、手で持った軽さで選ぶと、こうなります。

  • アッパーに補強材が入っておらず、足元が不安定になる
  • ふにゃふにゃで穴があきやすい
  • クッション材がスカスカで衝撃を吸収できない
  • かかとの芯材がなくて、着地がグラグラする
  • 軽くするためにインソールまで省かれている

靴が足の動きをサポートしてくれないので、不安定な靴のグラつきを、足が無駄にがんばって抑え続けることになります。

つまり、靴を100グラム軽くした代わりに、足の筋肉が一歩ごとに余計な仕事をするわけです。これでは本末転倒ですよね。

実際に履き続けた靴がこちら

歪んだスニーカー
軽さ優先の靴を履き続けた状態。靴自体が内側に歪んでいます。

靴が歪み始める原因は2つです。

1つ目は、ソールの素材が体重で潰れてしまうから。
2つ目は、アッパーの素材が柔らかく、足が靴の中で自由に動いて素材が伸びてしまうから。

つま先も擦れています。靴が歪むと歩行が安定せず、足と靴がフィットしなくなるので、足を上げても靴がついてこず、地面を擦りながら歩いてしまうのです。

みなさんの下駄箱にも、こんな状態になっている靴はありませんか?

そもそも、数十グラムの差はどれくらい効くの?

ここで、正直なデータの話をします。

ランニングの研究では、靴が片足100グラム重くなると、走りのエネルギーコストが約1%増えることが知られています。

100g ≒ 約1%
靴の重量増加とランニングエネルギーコストの関係(ランニング研究の知見)

確かに軽さには意味があります。だからこそマラソンのトップ選手は軽い靴を履きます。でも逆に言えば、普段履きで問題になる20〜50グラム程度の差は、1%にも満たない世界。一方、かかとが安定しない靴で足がグラつきを抑え続けるロスは、この比ではありません。

つまり、こういうことです。

軽さに意味がないのではなく、「優先順位」の問題。まず用途に必要な機能を満たした上で、その中から軽いものを選ぶ。この順番が逆になると、失敗します。

どうしてみんな「軽さ」を求めるの?

靴を選ぶ人

足に悩みがある方ほど、考えがあって軽い靴を求めます。でも、その選択が悩みを深くしていることが多いんです。

足育カウンセラー
「足が痛いから、触れても痛くない薄い素材の靴が欲しい」
→ 足が靴の中で動いてしまい、痛みが悪化する。

「ふくらはぎがパンパンで疲れやすいから、素足感覚の軽い靴が欲しい」
→ 靴が変形して、余計に負荷がかかって疲れてしまう。

みなさんが考えている「軽さ」の意味のままだと、足の悩みは解決できないのです。

靴は、足のサポーターです。サポーターをゆるく巻いても効果がないのと同じで、支えのない靴は、足を守ってくれません。

「歩いて軽い靴」を見分ける4つのチェック

では、お店で何を見ればいいのか。手で持つ前に、この4つをチェックしてみてください。

  • かかとをつまむ ── かかとの芯(ヒールカウンター)がしっかり硬いか。ここが着地の安定を決めます
  • 靴を雑巾のようにねじる ── 真ん中で簡単にねじれる靴は、足のグラつきを止められません
  • 曲がる位置を見る ── つま先の付け根(指の曲がる位置)で曲がるか。真ん中で折れる靴はNG
  • その上で、軽いものを選ぶ ── ここまで合格した候補の中でなら、軽さは正義です
子どもの靴こそ、この順番で 足が成長途中の子どもは、大人以上に靴のサポートの影響を受けます。「軽くて履かせやすいから」だけで選んだペラペラの靴は、足の発達の土台を不安定にします。かかとの芯・ねじれにくさ・曲がる位置。足育の視点でも、チェックの順番は同じです。

まとめ:軽さは「最後に」選ぶ

靴は軽いほうがいい。それは間違いではありません。

でも、手で持った軽さは、履いて歩いた軽さを保証してくれません。軽さは何かの機能と引き換えに手に入るものだからです。

まず用途と機能。その条件を満たした候補の中から、いちばん軽いものを選ぶ。

「軽さ」×「もう1つの機能」

この考え方で靴選びをすることで、あなたの足に本当に合う靴が選べるようになります。次に靴屋さんへ行ったら、手に取る前に、まずかかとをつまんでみてくださいね。

足育心育カウンセラー

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