体をどう使う?脳と体の連携を考える

こんにちは!【足育】心と体の授業です。

今回は、私たちの体、そして運動について、とても興味深いお話が聞けるYouTube動画を見つけました。
東京大学の小林寛道教授と、UCLAご卒業でアメリカでのパーソナルトレーナー経験もお持ちの名越茂彦氏による対談の抜粋です。

是非、詳細は動画を視聴してください。

この動画では、私たちが普段当たり前だと思っている運動の考え方や、子供の頃の運動経験がどれほど大切かについて、目からウロコの情報がたくさんありました!
特に【足育】心と体の授業で大切にしたい、「体をどう使うか」「脳と体をどう繋げるか」というテーマに深く関わる内容でしたので、皆さんに共有したいと思います。

⭐️読んでほしい方は以下のマインドです。

マインド

質より量が大事で、量をこなせば質が上がる!!!

まず名越氏は、動画の中で印象的だったのは、日本のトレーニングに対する疑問です。名越氏はアメリカでの経験を経て日本に戻られた際、「1セット10回で3セット」といった、目的が不明確なまま行われる反復練習の多さにカルチャーショックを受けたとおっしゃっています。

筋トレは筋肉にパワーをつけられますが、そのパワーをどう発揮するかは別のトレーニングが必要だと指摘されています。重要なのは、「何のためにトレーニングをするのか」という目的を明確にすること。目的が定まれば、それに適したレップ数やセット数、重さなどが決まってくるはずなのに、皆が一律に「10回3セット」をやっているのは理解できない、と。日本のトレーニング研究レベルは高いはずなのに、その知識が一般の人々には広がっていない現状についても触れられています。

Success

日本のトレーニング文化への疑問と新しい視点。
目的に応じて、量を行わないと質は上がらない。最悪、悪影響を及ぼす。

機能的トレーニングとは?脳と体の連携「キネティックチェーン」

動画で紹介されている新しいトレーニングの考え方の一つが、機能的トレーニング(ファンクショナル・トレーニング)です。
これは、単に特定の筋肉を鍛えるだけでなく、脳と体をどう繋げ、神経・筋肉・骨格系を全て連動させて動かすかを構築するトレーニングだそうです。これを「キネティックチェーン」と呼んでいます。

効率的に体を動かすことを学習するのが目的であり、必ずしも物を使う必要はない、という点が強調されていました。日本のウェイトトレーニングのような「物を使って」行う機能的トレーニングしか知られていない現状に対し、体の動かし方そのものを学習することを目指したい、とお話しされています。

今回は難しい話をわかりやすく解説するよ♪

動きの基本概念:「軸」と「同側神経支配」

動画では、体の動きの基本として「軸」という概念が紹介されています。
特に中心軸、左体軸、右体軸があり、この軸を意識することが自然で効率的な動きに繋がるそうです。
体軸を支えるのは、大腰筋のような体幹深部筋だと言及されています。

そして、この「軸」に関連して、興味深い「同側神経支配(同族神経支配)」という言葉が出てきました。
これは、右半身と左半身を分けて考え、同じ側の手足や体幹を連動させて動かす神経支配のことで、普段の生活で無意識に行っている「対側神経支配」(右足と左手、左足と右手のように斜めに体を動かす交差型)とは対立する概念だそうです。
例えば、右足と右手を同時にパッと動かすような動きがこれにあたります。この同側型で動くためには、反対側の軸がしっかりしている必要があるとのことです。

軸や同側神経支配を意識し、使い分けられるようになると、実際の生活の動きが良くなったり、アスリートであれば競技力向上に繋がる可能性があるとのことです。
重心の移動を意識する指導は一般的ですが、「軸」は重心とはまた別の概念であり、重力に対する体の支え方のようなものだという説明は分かりやすかったです。
重心は常に体の中にあるとは限らず、体の外に出ることもあるため、重心を意識することの難しさも指摘されています。

マインドセット

日本のトレーニング文化への疑問と新しい視点。
目的に応じて、量を行わないと質は上がらない。最悪、悪影響を及ぼす。

動きの学習は「量より質」

「動きの学習」というと、私たちはついつい「何回も反復練習して体で覚える」と考えがちです。
しかし、動画では、単なる回数(量)の反復練習だけでは不十分であり、それは間違っていると明言されています。

重要なのは「質」。1000回反復しても体の軸がブレる人もいれば、数回やっただけですぐに動きのコツを掴める人もいるそうです。(私はイメージつきました。。。)
これは、脳とその動きの連携、つまり「意識」が重要だということ。
イメージ通りに体を動かすためのトレーニングが必要であり、単に体を動かすだけでなく、意識やエネルギーの流れといった微妙な体の作りも関わってくるとお話しされています。

スポーツメンタルトレーニングの重要性がわかりますね。

子供の頃の運動経験が未来を作る

特に【足育】心と体の授業と関連が深いと感じたのは、子供の頃の運動経験の重要性についてのお話です。
神経系が最も発達する2歳、3歳、4歳頃に、様々な動きをすることが非常に大切だそうです。
(めちゃくちゃ早いですね。。。)

アメリカでは、地面を這ったり、木に登ったり、鬼ごっこやかくれんぼなど、ルールを教えるよりも自由に遊ばせることで、自分の体を使ってどう動くかを自然に学ばせる、という考え方があるそうです。
(スラックレールと同じですね!)
また、高校ではシーズンごとに異なるスポーツを選択でき、複数のスポーツを経験することで、多様な体の動き方を学習する機会が多いとのことです。
これは、一つの動きを反復するのではなく、応用が効く「質」の高い動きの学習に繋がる、と説明されています。

私の学生時代の後悔は、一つのスポーツを頑張ったことですね。
他のスポーツから学ぶことに気づけばよかった。。。

日本のように早いうちから一つのスポーツに特化させ、その時々の結果を出すことを重視する傾向に対し、アメリカでは子供を「潰さず」、将来的な成長を見据えて指導している点が対照的でした。
小さい頃に様々な動きやスポーツを経験することが、多様な体の動きのイメージを育み、将来の運動能力に繋がるという考えは、非常に納得がいくものでした。

動物的な動きとセンサーの活用

現代の便利な生活は、かつて使っていた筋肉を使わなくさせ、体が単純化し、頭がロボット化していく可能性があるという指摘も印象に残りました。

例えば、ハイハイをせずにいきなり立って歩く子供がいるそうですが、四足動物のようなハイハイの動きは神経発達に必要であり、そういった動物的な動きが不足すると、本来持っている神経支配が不十分になってしまうことがあるそうです。

単に単純な動き(例えば筋トレの一方向の動きだけ)を繰り返すだけでは、体に備わっているたくさんの「センサー」をうまく使えなくなってしまう。
複雑な動きこそが、全身のセンサーを使い、そこから得られる情報を脳に伝え、分析し、適切な動きの指令を出すという、より高度な脳と体の連携を可能にするとのことです。
このような複雑な動きを引き出すトレーニングとして、日本の武道の技を研究して作られたトレーニングマシンが紹介されていました。(気になりますよね。。。)
重たいものを持つウェイトトレーニングでは難しい、柔らかく多様な体の動きを引き出すことを目的としているそうです。

QOM:より良い動きの質を目指して

小林教授は、QOL(Quality of Life:生活の質)に対して、QOM(Quality of Motion:動きの質)という言葉を提唱されています。
これは、姿勢や歩き方、スポーツパフォーマンスなど、いかに質高く動けるかという視点の重要性を示しています。
このQOMという概念が広く理解され、普及していくことを願っておられました。

私はバウアーの考えが好きなので大賛成です。

まとめ

今回の動画を拝見して、【足育】心と体の授業で私たちが伝えるべきことの方向性が、より明確になったと感じています。

マインドセット

単に「足を速くする」「高く跳ぶ」といった表面的な運動能力だけでなく、「自分の体を思い通りに動かすための、脳と体の深い連携」がどれほど重要か、という視点は、まさに私が目指す「心と体の授業」の核心に触れるものだと感じました。

特に、子供の頃の多様な「遊び」や運動経験が、将来の運動能力だけでなく、脳の発達や体のセンサーを活かす力、さらには応用力に繋がるという点は、私の活動において、保護者や選手にお伝えしたい最も大切なメッセージの一つだと改めて気づかされました。

また、単なる反復練習だけでなく、目的を持って「質の高い動き」を目指すこと、そして「軸」や「同側神経支配」といった具体的な体の使い方を意識すること は、子供たちが自分の体と向き合い、より深く理解するためのヒントになると感じました。抽象的な指導だけでなく、こういった科学的な概念を取り入れることで、子供たちの体の使い方の感覚が磨かれるかもしれません。

最終的に、「QOM」という概念は、単にアスリートのパフォーマンス向上だけでなく、全ての人が日々の生活の中で、より快適に、より自由に体を動かすことの価値を示していると感じています。
これもまた、【足育】心と体の授業が目指す、健康で質の高い生活を送るための基本となる考え方です。

これからも、今回の動画で学んだ「脳と体の連携」「動きの質」「子供の頃の多様な経験」といった視点を大切にしながら、【足育】心と体の授業の活動を通して、皆様と共に学び、成長していきたいと思います。

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いかがでしたでしょうか。今回の動画内容は、私たちが普段何気なく行っている運動や、子供への運動指導について、深く考えるきっかけを与えてくれるものでした。

これからも、このような学びを皆さんと共有し、【足育】心と体の授業が、皆様の健やかな心と体の成長に役立つ情報を提供できれば幸いです。

次回のブログもお楽しみに!