足底筋膜炎に効く足のトレーニングは?専門家7カ国が合意したプログラムを解説
RESEARCH REVIEW
足底筋膜炎に、専門家が合意した
足のトレーニングとは
世界7カ国の専門家が議論を重ね、足底の痛みに対する段階的な強化プログラムがまとめられました。ただし、これは「効果が証明されたプログラム」ではありません。その意味も含めて、正確にお伝えします。
今回取り上げる論文
足底踵痛の治療のための足と足首の強化プログラムの開発:デルファイ・コンセンサス研究(2023年) Osborne et al. Journal of Foot and Ankle Research (2023) 16:6701 — CONTEXT足底の痛みは、思ったより長引く
はじめに用語を整理させてください。日本で「足底筋膜炎」と呼ばれている症状は、研究の世界では足底踵痛(Plantar Heel Pain:PHP)と呼ばれることが増えています。踵の痛みには足底腱膜以外の原因もあり、「筋膜の炎症」と決めつけないための呼び方です。
この記事では、検索されやすさを考えて「足底筋膜炎」の表記も使いますが、内容としては足底踵痛の話だとご理解ください。
占める割合(最大)
症状が残っていた割合
2つめの数字は、少し補足が必要です。この研究で報告されているのは「軽度ながら症状が続いている」という状態で、10年間ずっと苦しんでいるという意味ではありません。ただ、「そのうち治る」と楽観していい症状でもない、ということは示しています。
そして、この痛みを抱える人には足と足首の筋機能・筋力・筋のサイズが低下しているという関連が報告されています。だから筋力に手を打てば、結果が変わるかもしれない——これが今回の研究の出発点です。
ただし、ここで注意が要ります。筋力が低下しているのは、痛みの「原因」なのか「結果」なのか。痛いから動かさなくなって弱った、という順序も十分にありえます。これはまだ決着していません。
02 — WHAT IT ISデルファイ研究とは何か
ここがこの記事でいちばん大事な部分です。
これまで、足底踵痛に対する強化プログラムには一貫性がありませんでした。どの筋肉を狙うのか、何を、どれくらいの頻度でやるのか。指針がなかった。
そこで、7カ国から集まった臨床家・研究者・講師が、質問と回答を何度も往復させて意見を収束させました。これがデルファイ法です。今回は70%以上の一致をもって「合意」としています。
価値のある取り組みです。何もないところに、たたき台ができた。
ただ、これを「科学的根拠」と呼ぶのは正確ではありません。デルファイ研究が示すのは「専門家がそう考えている」であって、「やれば治る」ではないからです。
「効果が証明されたもの」ではなく
「これから検証されるたたき台」です。
研究者自身も、そう位置づけています。次の段階として、実際に効くかどうかを試験で確かめる必要がある——そこまで含めて、この論文の結論です。
期待値をここに置いたうえで、中身を見ていきましょう。
03 — CONSENSUS専門家が挙げた3つの運動
回答した24名のうち、92%(22名)が段階的な強化プログラムを推奨しました。その中で、特に多く挙がった運動が3つあります。
ヒールレイズ
n = 10
踵を上げる運動。座位・立位・片足など、複数のバリエーションが挙げられました。
足趾の底屈
n = 8
足の指を曲げる運動。タオルギャザーや、バンドを使った母趾・小趾の底屈など。
短足運動
n = 8
指を曲げずに、母趾の付け根を踵のほうへ引き寄せて土踏まずを持ち上げる運動。
※ n は、その運動を挙げた専門家の人数です。
短足運動は、やり方を間違えやすい運動です。指を曲げて握ってしまうと、別の筋肉の練習になります。指は床につけたまま、足の裏だけを縮める。ここは動画や指導者の確認があると確実です。
進め方について、100%の合意が得られた点
専門家の意見が完全に一致したのが、この順番です。
次に、動きの機能性を高める。
いきなり複雑な動きに進まず、まず重さで筋力の土台を作る。筋力トレーニングの一般的な原則どおりです。
04 — SAFETYプログラムを見る前に
先に読んでください
以下に紹介するのは、臨床家が患者に処方することを想定した内容です。8RM・10RMといった負荷設定は、本来その人の状態を評価したうえで決めるものです。
痛みがある状態で、自己判断で高負荷を始めないでください。踵の痛みには疲労骨折や神経の絞扼など、別の原因が隠れていることがあります。原因によっては、負荷をかけることで悪化します。
まずは整形外科で原因を確認し、そのうえで理学療法士や医師と一緒に進めてください。この記事は診断や治療の代わりにはなりません。
RM(Repetition Maximum)とは、その回数をぎりぎり達成できる重さのことです。8RMなら「8回で限界がくる重さ」。数字だけ真似ても、自分にとっての適切な重さは分かりません。
05 — PROGRAM3つのタイプ別プログラム
研究では、3つの異なる患者像を想定して議論されました。Stage 1から始め、痛みや困難がなければ次へ進むという設計です。
より高い負荷と頻度、そして機能性の高い運動が求められます。
| ステージ | エクササイズ | 負荷と回数の目安 |
|---|---|---|
| Stage 1 | ヒールレイズ/母趾底屈(バンド)/短足運動(座位) | 8RM程度で6〜12回 × 4セット |
| Stage 2 | つま先を広げる/つま先を背屈させた立位ヒールレイズ/短足運動(立位・片足) | 8RM程度で6〜10回 × 5セット |
| Stage 3 | つま先を背屈させた立位片足ヒールレイズ/ウォーキングランジ | 10RM・20RMなど高負荷 |
足に継続的な負担がかかっているため、頻度を調整しながら足の内在筋を鍛えます。
| ステージ | エクササイズ | 負荷と回数の目安 |
|---|---|---|
| Stage 1 | 短足運動(座位)/母趾底屈(バンド)/小趾底屈(バンド) | 10RM程度で8〜12回 × 4セット |
| Stage 2 | つま先を広げる/つま先を背屈させた立位ヒールレイズ/短足運動(立位) | 8RM程度で6〜10回 × 5セット |
| Stage 3 | つま先を背屈させた立位ヒールレイズ/ウォーキングランジ | 8RM・15RMの負荷 |
日常生活動作の維持と、足の筋力向上を目指します。
| ステージ | エクササイズ | 負荷と回数の目安 |
|---|---|---|
| Stage 1 | 足趾底屈(バンド)/短足運動(座位)/片足立ち(2分間) | 10RM程度で8〜12回 × 4セット |
| Stage 2 | つま先を広げる/ヒールレイズ(座位)/足趾底屈(バンド) | 8RM程度で6〜10回 × 5セット |
| Stage 3 | 立位ヒールレイズ/椅子スクワット | 8RMの負荷 |
※ 表は横にスクロールできます。
06 — SHOES足育カウンセラーとして、付け加えたいこと
この論文には靴の話がほとんど出てきません。強化プログラムを作る研究なので当然ではあるのですが、現場に立つ者として、ひとつ言い添えておきたいことがあります。
短足運動もヒールレイズも、母趾球で地面を押せることが前提になっています。ところが、大きすぎる靴やかかとの芯が潰れた靴を毎日履いていると、足は靴の中で滑り、指で掴む癖がつきます。
1日のうち、トレーニングに使う時間は10分。靴を履いている時間は10時間です。どちらが足の使い方を決めているかという話でもあります。
あわせて読む 運動する前に、靴を見る理由 →07 — MINDSETこの論文が認めている、もうひとつの限界
専門家が知恵を出し合って、具体的な行動計画ができました。それでも論文には、正直な限界が書かれています。
「患者の好みや意見が調査されていない」という点です。
実際、足底踵痛の患者が「提供された運動に不満を感じる」と報告した質的研究もあります。専門家が最善だと考えた運動と、本人が続けたいと思える運動は、必ずしも一致しません。
伝えたいポイント
どんなに専門家が合意した優れたプログラムでも、本人が「やりたい」と思えなければ、習慣にはなりません。
週に4セット×3種目を、2日おきに。紙の上では簡単です。でも実際に半年続く人と、2週間でやめる人がいる。その差を作っているのは、筋力でも知識でもありません。
だから私は、足元を整えることと同じくらい、続けられる状態をつくることを大事にしています。
私自身、高校時代の怪我で「早く知っていれば」と悔しい思いをした経験があります。だからこそ、正しい情報を、続けられる形で届けたいと思っています。
正しい靴選びと足のケア。そこにマインドの部分を重ねる。この2つが揃ってはじめて、体は変わっていきます。


